目次
Table of Contents
1. dbtとは?──ELTの“T”に特化した変換ツール
従来のデータ処理は「ETL(Extract → Transform → Load)」が主流でしたが、クラウドデータウェアハウスの進化により、処理の流れは「ELT(Extract → Load → Transform)」が一般的になっています。
dbt(Data Build Tool)は、このELTにおけるTransform(変換)部分に特化したオープンソースツールです。
特徴は以下の通りです。
- SQLベースで記述できるため、プログラミングに詳しくないアナリストでも利用可能
- モデル間の依存関係を自動管理(DAG形式)
- テスト・ドキュメント生成・再利用性などソフトウェア開発のベストプラクティスをデータ変換に適用
つまり、dbtは「データ変換をコードで管理し、品質と再現性を担保するためのプラットフォーム」です。
2. dbtが必要とされる理由
なぜETLツールや手書きSQLではなく、dbtを使うべきなのでしょうか?理由は大きく3つあります。
- 再現性と信頼性の担保
SQLスクリプトが散在せず、すべての変換ロジックがGitで管理されるため、変更履歴やレビューが可能になります。 - チーム開発の効率化
モデル間の依存関係を自動解決し、必要な順番でSQLを実行。チームメンバー間で同じデータ変換基盤を共有できます。 - データ品質の向上
dbt test
でnullや重複、制約違反などを自動チェック。問題があればすぐ検知可能です。
3. dbtの基本概念と主要コンポーネント
dbtを理解するには、以下の主要コンポーネントを押さえるのが近道です。
3-1. モデル(Models)
- 変換ロジックを記述したSQLファイル(例:
models/stg_orders.sql
)。 - 他モデルを参照するときは
ref('model_name')
を使い、依存関係を明示します。
モデルの作成方法はこちら。
3-2. マクロ(Macros)
- 繰り返し使うSQLやロジックをJinjaテンプレートで定義。
- 例:日付フォーマット変換など。
dbtにおけるJinjaとマクロの基礎はこちら。
3-3. ソース(Sources)
- データの出発点(rawテーブルなど)を宣言して利用。
- データの来歴を追跡可能にします。
3-4. テスト(Tests)
schema.yml
に記述して自動実行。- 標準テスト(
unique
、not_null
)のほか、カスタムテストも作成可能。
3-5. ドキュメント(Docs)
- モデルやソースに説明を加え、HTMLで閲覧可能なドキュメントを自動生成。
4. dbtの使い方(最初の一歩)
以下はローカル環境でdbtを動かす基本の流れです。
インストール
pip install dbt-core dbt-bigquery # 使用するDWHに合わせてアダプターを選択
初期化
dbt init my_project
モデルの実行とテスト
dbt run # モデルを実行
dbt test # テストを実行
ドキュメントの生成・閲覧
dbt docs generate && dbt docs serve # ドキュメント生成・閲覧
5. dbt導入のメリットを最大化するコツ
- Git + Pull Request運用でSQLの品質を維持
- **環境分離(dev / prod)**で安全なデプロイ
- **モデル階層設計(staging → intermediate → marts)**でロジックを整理
6. まとめ
dbtは単なるSQL実行ツールではなく、データ変換プロジェクトをソフトウェア開発のように管理できる基盤です。
これにより、データの信頼性が高まり、チーム開発や運用の効率化が実現します。
まずはローカルで小さく始めてみて、プロジェクトのスケールに応じて活用範囲を広げていくのがおすすめです。