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はじめに
データ分析やAIの現場では「データレイク」や「データウェアハウス」といった言葉をよく耳にします。最近はその進化形として「レイクハウス」という考え方が広がり、その中で重要な役割を果たしているのが オープンテーブルフォーマット です。
本記事では、その代表例のひとつ Apache Iceberg(アイスバーグ) をわかりやすく解説し、Databricksが開発した Delta Lake との違いや関係についても整理します。
Apache Icebergとは?
Apache Icebergは、もともとNetflixが開発し、その後Apache Software Foundationに寄贈された オープンソースのテーブル形式 です。
従来のデータレイクは「ただのファイル置き場」になりがちで、以下のような課題がありました:
- データを効率よく検索できない
- データを安全に更新するのが難しい
- 大規模になるほど管理が複雑
Icebergはこうした課題を解決するために生まれました。
Icebergの特徴
1. メタデータとデータの分離
Icebergでは、データ本体(Parquetなどのファイル)と、データの管理情報(メタデータ)を分けて扱います。
これにより:
- 大規模なテーブルでも効率的に検索可能
- 複数のクエリエンジンから同時に使いやすい
実際、数十テラバイト規模のデータでも高速にクエリが動作します。
スキーマ/パーティションの進化とタイムトラベル
- スキーマ進化:列の追加や削除を、既存データを作り直さずに反映可能。
- パーティション進化:データの分け方(パーティション)も柔軟に変更できる。
- タイムトラベル:過去のスナップショットを保存しているので、「昨日の状態」や「1週間前の状態」に遡って分析できる。
スケールと採用事例
Icebergはオープンな標準として設計されており、Netflixだけでなく:
- Snowflake
- AWS
- Databricks
など多くのプラットフォームに採用されています。さらに、Spark、Flink、Trinoといった多様なエンジンから利用できるため、特定のベンダーに縛られないのも強みです。
データ整合性と最適化
Icebergは スナップショット分離 という仕組みでACIDトランザクションを保証します。
これにより「複数人が同時にデータを書き換えても壊れない」状態を実現。
さらに:
- 小さなファイルをまとめる「コンパクション」
- 不要ファイルの自動削除
といった最適化機能もあり、大規模環境でも快適に使えます。
Delta Lakeとの比較
同じ「オープンテーブルフォーマット」である Delta Lake と比べると、仕組みに違いがあります。
比較項目 | Apache Iceberg | Delta Lake |
---|---|---|
メタデータ管理 | Parquet形式の階層構造。スナップショット単位で管理し効率的 | JSONログ(_delta_log)にすべての変更を記録。書き込み頻度が高い環境に強い |
エンジン互換性 | Spark、Flink、Trinoなど多数に対応。マルチエンジン利用向き | Databricksに最適化され、特にSparkで高性能 |
読み書き特性 | 読み込み性能を重視。追加書き込みや修正に強くバッチ処理向け | 書き込みに強く、強固な一貫性を提供 |
採用範囲 | Snowflake、AWS、Databricksなど幅広く採用 | Databricksでは標準。他の環境では追加設定が必要 |
つまり、
- Icebergは「幅広い環境で読める共通規格」
- Delta Lakeは「Databricks環境での最適解」
という棲み分けです。
まとめ
- Apache Iceberg はNetflix発のオープンテーブルフォーマットで、大規模データを効率的に扱える。
- 特徴:メタデータ分離、スキーマ進化、タイムトラベル、ACIDトランザクション対応。
- Delta Lakeとの違い:メタデータの管理方式や対応エンジンに違いがある。
- Databricksの動き:Delta Lake開発元でありながらIcebergもサポートし、両者を統合する方向に進んでいる。
一言でいうと
Icebergは「どんな環境でも使える共通の器」、Delta Lakeは「Databricksで使うなら最適解」。
そして未来は、その垣根がなくなり、もっと自由にデータを扱える世界になりそうです。