機械学習は、「コンピュータがデータをもとにパターンを学習し、新しいデータに対して予測や意思決定を行う技術」で、明示的にプログラムせずとも性能が向上するよう設計されたAIの一分野です。
「AI」は広義な概念ですが、現代のAIと呼ばれる技術の多くはこの機械学習に基づいており、両者はしばしば同義に扱われることもあります。
機械学習の手法としては、大きく下記の3つが存在する。
- 教師あり学習
- 教師なし学習
- 強化学習
それぞれについてわかりやすく見ていきましょう!
Table of Contents
1. 教師あり学習(Supervised Learning)
どのようなものか?
教師あり学習とは、入力データに対して正解(ラベル)付きのデータをもとに、モデルを訓練する機械学習です。モデルはデータと正解のペアを学習することで、未知のデータに対する予測や分類を行えるようになります。たとえば「メール文がスパムかどうか」「住宅価格を予測する」などが典型例です。
こうした学習は、入力(特徴)と出力(ラベル)の関係を学び「未知の入力にはどのような予測を返すべきか?」を判断させるフレームワークで、「回帰(数値予測)」と「分類(カテゴリ予測)」に大別されます。
どのような場面で使用されるか?
以下のような典型的なユースケースがあります。
- 画像分類(例:アップルかバナナかを分類する)
- スパムメール検知、顧客の購買予測などの分類タスク
- 住宅価格や設備需要の予測などの回帰タスク
「正解データがある状況」で、「その正解をもとに未来や未知の入力を予測したい場合」に、非常に有効です。
実際に使用する場合、どのようなクラウドサービスか?
クラウドベンダー各社は、教師あり学習向けに強力なサービス群を提供しています。
- AWS:Amazon SageMaker
教師あり学習用のアルゴリズムが豊富に用意されており、データ準備から学習・デプロイまでエンドツーエンドで支援します。 - Google Cloud:Vertex AI、BigQuery ML
Vertex AIでは教師ありモデルを直感的に構築可能。BigQuery MLでは、SQLベースで教師あり学習モデルを動かせます。 - Azure:Azure Machine Learning
ノーコードで自動ML(AutoML)による分類・回帰モデルのトレーニングが可能で、エンタープライズの運用にも適しています。
2. 教師なし学習(Unsupervised Learning)
どのようなものか?
教師なし学習では、ラベルなしデータのみを使って、データの構造やパターンを見つけ出す学習手法です。つまり「正解のないデータから情報をグループ化したり特徴抽出する」ことに重点を置きます。
代表的なタスクには「クラスタリング(グルーピング)」や「次元圧縮(特徴抽出)」などがあり、データそのものの理解や可視化に非常に効果的です。
どのような場面で使用されるか?
次のようなユースケースがあります。
- 顧客セグメンテーション:購買履歴などの特徴に基づき顧客グループを抽出し、マーケティング施策に活かす。
- 異常検知/不正検知:通常パターンと異なる振る舞いを異常として検出。
- ビッグデータ可視化やデータ探索:多次元データを2次元に圧縮して分布を視覚化、洞察を得る。
「ラベルのない大量データ」への適用や、データ理解に適した手法です。
実際に使用する場合、どのようなクラウドサービスか?
クラウド上で教師なし学習を行う際には、以下のようなサービスが利用されます:
- AWS:Amazon SageMaker
クラスタリングや異常検知、次元削減のためのビルトインアルゴリズムが揃っています。 - Google Cloud:Vertex AI
データのクラスタリング、次元圧縮や異常検知のための自動化ツールを提供。 - Azure:Azure Machine Learning
データ探索のための自動ML機能が備わり、教師なし手法も扱える柔軟性があります。
3. 強化学習(Reinforcement Learning)
どのようなものか?
強化学習は、エージェントが環境に対して「行動」を選び、得られる報酬(または罰)に基づいて最適な行動を学んでいく枠組みです。人が試行錯誤しながら学習するプロセスにも似ています。
このプロセスは「行動 → 環境 → 状態変化と報酬 → 学習」というフィードバックループを繰り返す形で進行します。
どのような場面で使用されるか?
複雑な最適化や動的環境での意思決定に適しています:
- 制御問題/ロボット制御:ロボットの動作学習、工場や搬送ロボットの制御。
- ゲームプレイAIの開発:AlphaGoやDeepMindの事例のように、戦略が求められるゲームで高い性能を発揮。
- 推薦システムの最適化:ユーザーとのインタラクションを通じた継続改善。
「試行と報酬を通じて行動を最適化したい場面」に導入されます。
実際に使用する場合、どのようなクラウドサービスか?
強化学習の開発・運用には、以下のようなクラウド支援があります:
- AWS:Amazon SageMaker RL
SageMaker上でRLのトレーニングが行え、Ray RLlibやIntel Coachなどのツールキットをサポート。環境シミュレーションやハイパーパラメータ探索も可能です。
また、DeepRacerという学習用小型自動車で遊びながら実践的に学ぶ取り組みもあります。 - Google Cloud:Vertex AI + GKE(Google Kubernetes Engine)
Vertex AIでモデルの構築・管理を行い、GKE上でスケーラブルにRLエージェントを運用できます。 - Azure:Azure Machine Learning
RL環境の構築やパイプライン構成にはまだ限定的な部分はあるものの、柔軟なMLOpsとの統合が可能です。
全体まとめと比較ポイント
学習タイプ | 概要 | 適用場面 | 主なクラウドサービス |
---|---|---|---|
教師あり学習 | ラベル付きデータから予測モデルの構築 | 分類・回帰問題(例:画像分類/価格予測) | AWS SageMaker、Vertex AI、Azure ML |
教師なし学習 | ラベルなしデータから構造やパターンを抽出 | クラスタリング/異常検知/次元削減 | AWS SageMaker、Vertex AI、Azure ML |
強化学習 | 行動と報酬に基づく試行錯誤による最適化 | ゲームAI/ロボット制御/推薦最適化 | AWS SageMaker RL、Vertex AI + GKE、Azure ML |
まとめ
- 教師あり学習:正解があるデータで予測を行いたい場合に強力。SageMakerやVertex AIなどで容易に実施可能。
- 教師なし学習:データの構造やパターンを知りたい探索的分析に最適。クラスタリングや異常検知などに対応。
- 強化学習:複雑な環境下でエージェントに最適行動を学ばせたい場合に適用。AWS SageMaker RLなどが専門支援。
各学習方式の理解と使い分けにより、より実践的で効果的なAI活用が可能になります。用途に応じてクラウドサービスを活用すれば、開発の効率性と拡張性も大幅に向上します。